今年も大手塾さんのお陰で
慶應、金沢、山口という大学に生徒さんたちを
送るお手伝いをさせて頂きましたが、
小倉さんの様に途中で分からないからどうしたら
いいですかと悩まず離れさせてしまった生徒さんも
いました。
これから以下は小倉さんの受験に携われて西岡さん
の手記です。
結論から言うと、僕は「人間は、努力によって、人格の面から変われる」ということを学びました。
初めて僕が小倉さんに授業をしたときのことをよく覚えています。小倉さんは、僕がお話ししたことに対して、ただ「わかりません」と言いました。
僕はこの「わかりません」に、とても困ってしまいました。
「なるほど、ということは、僕の話に難しい部分があったんだな」と反省するのは当たり前として、ストレートに「わからない」と言われてしまうと、教える側としてはもうどうしようもないんです。
ただ「わからない」とだけ言っているのは、もうどんな知識も、そこでシャットアウトしてしまっている証拠です。小倉さんが「わからない」というシールを貼ってしまえば、その知識はどう頑張っても「わかる」というカテゴリーには入らないのです。
僕も昔は、小倉さんと同じように最初から「わからない」「できない」と思い込んで、勉強するのを拒んでいました。
「どうせやっても無駄だ」「ぱっと見てできないから、この問題は解けない」と思って、勉強は自分には向いていないと思い込んで、ずっと学年ビリの偏差値35でした。
「わかりません」から「わかりたい」への大変化
ですが、1年間勉強を教えさせていただく中で、小倉さんのこの「わかりません」が、明確に変化した瞬間があったのです。
僕は以前と同じように授業をして、「これ、わかりますか?」と聞きました。そうすると小倉さんは、少し考えてから、こう言ったのです。
「いまの段階だと理解できないから、どうすれば理解できるか、一緒に考えてもらってもいいですか?」
この発言に、僕はとても驚きました。いままで難しい問題に、ただ「わからない」と答えていた小倉さんが、「わかるためにはどうすればいいか」という問いを持つ姿勢で臨むようになったのです。
同じ「わからない」でも、最初の「わからない」とこれとは天と地ほどの差があります。
「難しいからわからない、できない」と自分で思い込んでいるうちは、いつまでもできるようにはなりません。でも、「きちんと考えればわかるはずだから、わかるようになるためには、できるようになるためには、どうすればいいか考えよう」と思うと、「わからない」がどんどん「わかる」になっていきます。
小倉さんがそういうふうに変化したのは、きっと「大きな目的に向かって頑張るようになったから」なのではないかと思います。
ドラゴン桜の作者である三田紀房先生は、「人間は、目標を持って努力しているときがいちばん、成長できる」と言っていました。
「具体的な数字の目標があって、その目標を達成するためにどうすればいいか? どんな努力をすればいいか? 何が足りないか? そういうことを考え、戦略を練るようになり、今までの自分とは違うことをして、成長するようになる。大学受験は、明瞭明快な、数値的な目標に向かって努力する行為だから、人間的に成長できるんだ」と。
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この考え方は、作中でも桜木先生が触れています。
(漫画:©︎三田紀房/コルク)
僕はこの言葉を、小倉さん自身が体現している、と感じたのです。
いくつであっても、何か1つの目標を持って努力する中で、思考が変わり、姿勢が変わり、人格が変わる。そういう瞬間を目撃したように感じているのです。
数値目標に向かって努力することの価値
いま、ペーパーテストの受験で大学に入学しようとする人の数は減っています。総合型選抜で受験する人が増えて、一般入試で受験する人の割合が減り、浪人する人も少なくなっています。
でもそんな中で、時代錯誤かもしれませんが、やっぱり受験っていいな、って思いました。
数字で決められた明確な目標に向かって努力することの価値は、やはり大きいのではないかと、小倉優子さんの411日の受験をお手伝いさせていただいた人間として、すごく強く思うのです。
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